二股ラジウム温泉と
晩秋の神秘
−北海道二都物語−
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<長万部の蟹飯>
昼食は長万部駅前の「蟹飯かなや」。

長万部の蟹飯は昔から駅弁が有名で、学生時代の北海道旅行でも駅のホームを走って買い求め、嬉々として食した記憶がある。
最近は全国の百貨店で定期的に開催されている「駅弁イベント」にも必ず出展し、しかも売上ランキングの上位に定着している。いまやご商売の成果は、長万部の店頭よりイベント出店の方が多いのでは?
ほぐした蟹の身がお重いっぱいに広がり、茶碗蒸しとおひたし、味噌汁に香の物がついて
1300円なり。伝統の美味は十二分にわが空きっ腹を満たしてくれた。
<紅葉とキタキツネ>

二股ラジウム温泉は長万部から距離にして約10`、車を飛ばせば2
0分で到着する。
二俣川沿いの渓谷は紅葉の盛りを過ぎているものの、広葉樹の樹林帯は美しい彩りに包まれていた。ところどころで車を止め、その光景をカメラに収め、整備された道路を快適に登った。

たどり着いた温泉は、かつて見たあの特徴あるドームが姿を消し、外観は様変わりの様相であった。古びた湯治場の建物はスマートに建て替えられ、いまや昔を想像することも困難である。
駐車場にはキタキツネが二匹、「なにか餌をください!」という目つきで哀願しているようにもみえた。「決して餌をあげないように!」と人間が書いた張り紙は、彼らにとって厳しい。

しかし、人間のやさしい「餌をあげたい」と思う気持ちが、キタキツネたちを破滅に追い込んでいるということも事実だ。本来肉食動物のキツネにとってスナック菓子は下剤にしかならず、結果免疫力が低下し、寄生する虫たちに身体を蝕まれる。待っているのはやせ衰えて朽ち果てる死のみ。
このことは、安易にファーストフードに走ったり、スナック菓子を好んで食べたりという現代人の、将来の姿を予感させるといったら言い過ぎだろうか。
前置きが長くなったがいよいよ二股ラジウム温泉にはいる。
<絶大な温浴効果・二股ラジウム温泉>

以前は混浴のイメージが強かったが、女風呂を広くしたため、女性もそちらで安心して入浴できる。
名物ともいえた天然の湯華の結晶は削り取られてしまい、昔を知るものにとってさびしさは否めない。そのかわり歩行訓練のためのプールが設備され、湯治場としての機能は拡充された。
世に聞こえる効能は絶大の「二股ラジウム」である。

あるお婆ちゃんが「この温泉に
1日浸かったら、エキスを落とさないため、翌日1日は風呂にはいってはいけない。それだけ効能が持続するから。」と言った。
この婆ちゃんは「2週間滞在するから2週間自宅の風呂にはいらない」ことを堅く守っている。事実である。おばあちゃんは続けて言う。「自分の健康のため。だって自宅の風呂にはいらなくても死ぬことはないでしょう?」
「体が臭くてたまらないでしょう!おばあちゃん!」と思うが。

とにかくこの温泉の効能は驚異的である。「ヘルニアは必ず治る。治らなかったらお金を返す」とまで言い切っている。治癒した訪問者からの便りが「皆様からの体験談」として掲示されていた。
歩くことも困難だった
80歳に近い老人が、一週間もこの温泉で療養すると、不思議なくらい軽やかに歩行ができるようになって帰宅したという。
スノーボードの転倒で痛めた椎間板ヘルニアの回復を報告する若者の例。
ほとんど声も出ない喉頭がんの患者が入浴と飲水(温泉水)で声が出るようになったばかりか、カラオケまでできるようになったという報告。
信じられないほどの効果だが、いずれも真実の報告であり、治癒した皆さんの文面は喜びと感動に満ちている。
これは信じていい。ヘルニアで悩んでいる人は、若者も含めて多い。悩み多き方は、だまされたと思って一度試してみたらどうだろうか?
<ボ ケ>
番外編!!
笑えない話も聞いた。おばあちゃんの痴呆の病気を治そうと一緒に二股に来る約束をしたのに、直前におばあちゃんの病状が悪化して入院してしまった女性の話。
「おばあちゃん行ってきますよ。」
「何処に行くのかね?」
「一人で二股ラジウムに行ってきますよ。」
「どうして行くのかね?」
「おばあちゃんが病院に入院してしまったので、もったいないから一人で行ってきますよ。」
「えー、私は病院にいるのかね?」
「そうですよ。だって、今点滴しているでしょ?」
「ああそうかねえ。」
「うーん・・・??」
痴呆とはこういうことでしょうか?笑い話ではすまされない!
<晩秋の・・・・・>
秋の日はつるべ落としの日というが、北国の落日はことば以上に早い。
羊蹄国道の蘭越町・昆布川温泉を左折し、ニセコ山系への道を急いだ。薬師温泉への岐路を通り過ぎなだらかな丘を上下すると、羊蹄山がこの季節特有の低い日差しを受け輝きながら、雄大な姿を現した。
美しい・・・と感じながらも、カメラを向ける時間も惜しんで先を急いだ。
どうしても日のあるうちに行きたかった・・・。


かつて通いなれた山の道をひた走り、「湯本温泉」や「雪秩父」を過ぎ、「五色温泉」への三叉路を左にとる。
まだ4時前というのに、山の東側斜面はすでに日暮れの様相を呈している。のんびりと前を走る車に苛立ちを感じながら、大谷地湿原の七曲を登りきってその駐車場に車を止めた。
わたしは走るように木道を急いだ。


幾度となく通った神秘の場所はこの夕方、寒々としたたたずまいの中で、霊気すら漂わせていた。沼の水は冷たく揺れ、周囲のダケカンバはすべての葉を落とし、足元の熊笹のみがざわざわと騒いでいる。もはや、西に傾き始めた太陽の光はここまで届きようがない。
この寂しすぎる景観もまた神秘の沼のひとつの姿。あと1ヶ月もすれば冷たい雪に覆われる沼は訪ねる人も皆無となり、6ヶ月の長い冬眠生活にはいる。山は静かにその準備をしている。
西の山の端に沈み行く太陽が、最後の情熱をふり絞るかのように赤く燃えていた。
この赤い怒りを、かつてニセコの地主であった有島武郎も確かに見たことだろう。そして「生まれ出る悩み」の画家・木田金次郎も・・・。
北の高みから、夜の帳が覆い始めた日本海に面した港の町を見下ろした。
木田の生きて描いた岩内の街の灯を・・・。
神秘の場所は、神か仙人の住まいする沼、「神仙沼」と呼ばれている・・・・・
<続く> 「8 雨の小樽」へ
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